災害時要援護者支援と近隣地域における自助共助の考え方

近隣地域における自助共助の考え方

災害が起こった際に何の備えもしていなければ、被害は拡大します。まず「自助」により、自分の命は自分で守れるように、平常時から備えを行っておくことが必要です。

しかし、災害の規模が大きくなれば、自助だけでは補いきれない場合があります。それから自助が難しい人も出現します。大規模な災害では、公的機関が行う活動(公助)が始まるには相当な時間がかかります。それまでは、近隣どうしで支え合う自助共助の活動を中心にするしかないのです

近隣どうし支え合えるようになるには、何を始めたらよいのかどうすればいざというときに支え合えるのかについてご近所さん同士で検討しましょう!

災害時要援護者となる「対象者」についての考え方

災害時要援護者とは必要な情報を迅速かつ的確に把握し、災害から自らを守るために安全な場所に避難するなどの災害時の一連の行動をとるのに支援を要する人々のことをいいます。

対象となる人々:高齢者・障害者・外国人・乳幼児・妊婦等

平常時は、必要なときに必要な支援が適切に受けられたら自立した生活を送ることはできていても、災害による住環境の変化・避難行動・避難所での生活には支援が必要となる方々も災害時の要援護者に含まれます。

災害時の要援護者がどこに住んでいるのかどうやって見つける?

★ 関係機関と情報共有方式

個人情報保護法の例外規定「人の生命、身体又は財産の保護に必要な場合」に準じて、要援護者本人から同意を得ずに、平常時から福祉関係部局等が保有する情報を、防災関係部局、自主防災組織、民生委員など関係機関が共有する方式

⇒ 明らかに要援護者本人の利益になる場合は可能

★ 手挙げ方式

要援護者登録の仕組みについてじゅうぶんに広報・周知した後に、要援護者自らが名簿登録を希望した場合に、そのかたの情報を収集し支援に活かす方式

⇒  望ましい方式だが、登録希望者が増えない・・・周知方法や理解度の問題がある

★  同意方式

福祉関係部局、防災関係部局、自主防災組織、民生委員など関係機関が要援護者本人に直接的に働きかけ、そのかたの情報を収集し支援に活かす方式

⇒  望ましい方式だが、民生委員等に労力負荷がかかる

 

自治会長は申請により要援護者台帳を市から受け取ることができる。

しかし実情は、責任の重さや台帳保管場所などの課題があることから後ろ向きなことが多い。

★ どれも困難!しかし、誰かが汗をかかねば始まらない!

 

平常時から、地域の見守り隊を結成するなど各地域にあった工夫をしましょう!

<工夫の例>
雨戸やカーテンが閉じられたままでないか確認する。

ご近所の方がゴミ出しに来られるか。

見守られるのを嫌がられる場合には

新聞・郵便・ヤクルト・コープの配達の方によるさりげない安否確認

近所の2-3人にさりげなくお願いし、普段と変わりないか見守ってもらう

 

おまけ:認知症の徴候の早期発見

・普段見かけない場所を歩いている

・同じ洋服や季節外れのを着ていたり、極端に洋服が汚れている

・買い物でおつりの計算ができなくなる、お札をだけをだされる

・なくしものが多くなる

要援護者の把握は、自主的に! 支援内容に関しては、現実的に!

1. 誰かから、させられるのではなく、地域住民たちが自主的に自助共助する必要性を自覚し、立ち上がるのが、最も効果的で継続した実践ができる。

2.見つけだした要援護者への支援は、実際に出来る内容のものでなければ現実的に助けることはできない。

3.支援を考えるとき、具体的でないと実践できない。

4.実践するには、練習や訓練をしておかないと実際の時には行えない。

災害時要援護者をどうやって助けるの?

福祉関係部局、防災関係部局、自主防災組織、民生委員など関係機関だけでは助けられない。公助が来るのは、ある程度落ち着いてからでないと無理である。

いざというときは、近隣の自助共助・親しい間柄が鍵となる。

どこに要援護者が住んでいるのかどうやって探す?

例)地域住民の有志で、住戸地図の一軒ずつにマッピングし、日頃の支援者は誰かを対応づけしていく。

災害時の支援者がいないひとは、どこにどれだけいるのかを見つけだす。

情報源:近所のおばさま・長く居住している情報通なひと・民生委員さん など

災害時要援護者の避難行動能力の査定

要援護者には災害が起こったときに、「必ず助けてもらえるということはない!」ということを伝えておく。

助かるためには要援護者であっても、出来ることはして、自力で助かるよう動くことが必要である。

例)災害発生時に玄関まで這い出てくることができるのか?

要援護者が災害時にどれくらいの避難行動が自分で出来るか、支援する側は査定する必要がある。

人々の減災意識を高める必要性

自分の生きている間にもう災害は起こらないだろうから何も備えない。災害が起こったらあきらめるしかないから何も備えないというひとがあまりにも多いのが現実である。

しかし、急病時にはなんとかしなきゃと思う人はけっこう多いのではないでしょうか?

病気になったのをきっかけにして寝たきりになったり、苦しんで死にたくないはないですよね!

急病に地域で備えて、自助共助の力を高め、健康に暮らそう!と働きかける。

具体的に学ぶ必要のある内容:

・ 致死率や障害率が高い病気の予兆や前兆を知り、早期発見と対応ができる。

・ 心臓マッサージやAEDの使い方、救急車の呼び方を学び、実践できる。

・ ご近所の人が急病になったときに何を手伝えばよいかを知り、練習しておく。

・ 日頃からご近所づきあいをしておく。

急病に地域で備えるということは、災害時の行動にも通じるものであり使える。


  • 兵庫県立大学 大学院 看護学研究科