2016年4月18日
熊本地震 避難所でのくらしの注意点

【避難所で暮らす人に多く起こりやすい健康問題】

  • 高血圧  避難者も支援者も普段の血圧より上昇しやすい(ストレスの多い生活・不眠・余震・将来への不安など血圧が安定する要素がない)
  • 持病の悪化 高血圧・糖尿病・喘息などいろいろ・・・
  • 不眠   多くの人と同じ空間で、心配を抱えながらで、眠れる環境でない
  • 風邪  多くの人が同じ空間にいて感染しやすい・寒いまたは熱い
  • 膀胱炎 トイレが遠い・汚いなどで排尿を我慢しがちで水分摂取も制限
  • めまい 血圧? 不眠? 過労? で誘発される
  • けが  被災した住宅の片づけによるものがおおい
  • 疲労  片付けによる肉体疲労・将来への不安
  • ストレス 様々な理由が複合
  • 感染症 劣悪な住環境による・食べ物の取り置きによる食中毒など
  • エコノミークラス症候群 水分摂取抑制と運動不足・車中泊からなる

エコノミークラス症候群とは・・・

狭い避難所(特に車中など)での寝泊まりが続いた場合、下肢静脈の血行は悪くなり血栓ができる。この血栓がはがれて肺血管に流れて、塞栓を起こした結果、呼吸困難やショック状態を起こす。

看護上のポイント:

①災害時の緊急避難時、長時間の同一姿勢や、車中の寝泊まりなどを行ったあとに、歩行時の呼吸困難や胸の痛み、一時的な意識消失、片側の足のむくみなどが出現する場合、エコノミー症候群を疑い、早急に医療機関へ受診する。

②寝返りが自由にできない様な状態で、長時間過ごしたり、寝泊まりする環境は回避する。特に足を動かせない状況を作らないよう、座って眠ることで足の血行を悪化させるため、やもを得ない場合であっても、衣服などで身体を締め付けないようにし、足を少しでも伸ばせる様な姿勢を確保していく。

③排尿回数を減らす為、水分摂取を控えることで、エコノミー症候群のリスクを高める。水分を制限をしないよう、脱水が引き起こす病態についても避難をしている人々に指導を行う。また、排泄環境を整えるためトイレの設置やプライバシー確保にも努めていく。

対処方法:

エコノミークラス症候群を予防するために知っておくこととして、

①水分摂取をこまめに行う。(脱水を起こさないよう、血液が固まらないよう)

②定期的に身体を動かすようにする。同じ姿勢ばかりで過ごさない。

③足を上げて寝る。可能であれば車のシートを倒したり足を伸ばせるよう工夫する。

④歩行や足首の曲げ伸ばし運動(足関節の底背屈運動)や、かかとの上げ下ろしを行ったり、ふくらはぎのマッサージを行う。弾性ストッキングの着用も有効。

ただし、すでに血栓の存在するときには、マッサージや運動はかえって血栓が飛ぶ可能性があるので医師の指示に従う。

 

【避難所の状況】

  • 換気・清掃が不十分
  • 物資不足による影響
  • 食事と寝床が同じ空間で行われる
  • 多くの人が使うトイレ(できたらトイレのスリッパは別に!)
  • ライフライン途絶による影響
  • 食生活の変化 塩分過剰・栄養の偏り・便秘
  • 入浴制限 皮膚疾患・不衛生・不快感・
  • プライバシーの欠如
  • 不安・恐怖  地震の場合は余震による恐怖、
  • 人々のストレスが高く環境や空間への不満がありトラブルが発生しやすい

【避難住民の健康維持に関する注意点】

・指定避難所の多くは小中学校で、避難場所は体育館や教室であ

・災害による避難時には、衣食住が同じ場所で行われることになるので、開設時から避難所環境を最善にすることに努める必要がある

(土足にしない、トイレの清潔、ごみ置き場の設置や分別、ペット)

・要援護者が避難所にいる場合には特に配慮が必要

要援護者(要配慮者ともいう)とは・・・高齢者・障害者・子ども・妊産婦・外国人など災害時に情報入手が十分にできないか、避難に支援が必要である人々

・食料や水の配給が十分であるか?摂取栄養素(たんぱく・脂肪・炭水化物・ビタミン・無機質)は十分か?

・感染症が流行っていないか?

・インフルエンザ・ノロウイルス・食中毒・風邪など

・薬がない、具合が悪い人は診療を受けさせる (日赤や災害拠点病院、都道府県病院、各種組織病院、都道府県医師会など多くの医療者が被災地へ入ってくるので、来た時にタイムリーに診療を受ける)

・避難所で過ごすことができない人(要援護者や病人)は、福祉避難所や病院への移送を早期に検討する

・在宅酸素療法患者や透析患者は早急に移送!

【必要となるケアや保健指導】

  • 疾病や外傷・症状への適切なケア
  • 健康管理(血圧・脈拍・呼吸・熱・衣服調整・)
  • 服薬管理 慢性疾患患者は特に薬の内容・量・残りのチェック
  • 感染予防ケア(うがいや手洗いの励行を指導・感染に対する正しい知識について被災者や医療者・支援者に教育)
  • 室温管理(冷暖房・扇風機)
  • 清潔ケア
  • あるもので工夫  柔軟な対応
  • 環境整備(住空間・トイレ・ごみ処理・掃除) ほこり予防のためできるだけ掃除機を!使用した雑巾やモップの衛生保持
  • 食品衛生管理(内容・量・食品期限を厳守し、食中毒を予防する

わたしの著書に詳しく書いてあります。

事例を通して学ぶ避難所・仮設住宅の看護ケア [単行本]
黒田 裕子 , 神崎 初美 (著)  日本看護協会出版会


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  • 兵庫県立大学 大学院 看護学研究科