熊本地震 災害支援 ボランティアにいくとき必要なもの

どんな所持物品の準備が必要か?

□ 災害支援ナース登録証や腕章など身分を保障するもの、あれば自分の名刺

□ 保険証のコピー

□ 現金(小銭)

□ 血圧計

□ 聴診器

□ 体温計

□ 消毒液とガーゼ、カットバン

□ 文房具(ボールペン・赤黒マジック・はさみ・ホッチキス・クリップ・セロハンテープ・ガムテープ・A4用紙数枚・メモ帳・付箋)

□ 懐中電灯(ペンライトは必ず、あればヘッドライト)と予備乾電池

□ 携帯ラジオ

□ 携帯電話(充電器、充電用乾電池、ACアダプター)

□ デジタルカメラ

□ ホイッスル(自分が災害に遭った場合に必要となる)

□ リュック、ウエストポーチ(活動時には貴重品は身につける)

□ 現地地図(交通路線入り)インターネット活用も可

□ 雨具(折りたたみ傘、レインコート)

□ 上履き(スリッパは不可)または軍足 → 避難所にはいる際に必要

□ 洗面道具

□ 裁縫道具

□ タオル

□ ティッシュペーパー

□ ウエットティッシュ

□ 着替え(日数分)、ソックス、下着、Tシャツなど

□ 自分の常備薬、生理用品、うがい薬、目薬

□ 携帯食 3食×派遣日数分(糖分・ビタミン、カルシウム補助食品)

□ ペットボトル飲料水

【災害早期に被災地に入る場合】

上記に加え

□ トイレットペーパー1巻

□ 簡易トイレ、紙パンツ、尿とりパッド → トイレが使用不可の時に代用

□ 寝袋

□ 食品ラップ → 創部のラップ療法や食器に敷くことで洗浄不要にできる

□ 割り箸 → 骨折時の副木にも使用可

□ 新聞紙 → 掃除・保温・床に敷く など

□ ビニール袋(大・中・小)→ 防水・雨具・更衣用の目隠しに使用可

□ 季節により虫除けスプレーや使い捨てカイロや使い捨て吸熱シート

どんな服装が適切か?

□ 季節にあった動きやすい服装で派手でないもの

□ 帽子

□ 靴底の厚い運動靴(水害災害時には長靴もしくは防水靴も考慮)

□ 被災地の気温や天気予報を確認する。

・避難所に行く前の心構え

できる限りに被災地域に関する情報を入手する!

派遣ナースとして避難所で活動することが決まったら、被災地外にいる間にできる限り被災地域に関する情報を入手して被災地内に出向いていただきたい。派遣が決まり現地に赴くまでには少なくとも24時間以上は時間の猶予があるだろう。その時間は「被災地状況の情報収集」のために割いてほしい。これから自分が行く被災地はもともとどのような地域であったのか?総人口、地域規模、死亡出生数、高齢化率など保健統計を知っておく事は被災地で必要となるだろう支援を予測する上で重要である。例えば、高齢化率が高いことがわかっていたら出会う被災者には高齢者が多いであろう。これらの情報は県や市役所のホームページに必ず記述されているためWebを閲覧し調べるようにしておいて欲しい。

災害発生による被害状況がどの程度かを把握する

行こうとしている被災地の災害規模と種類、地域特殊性、道路や交通機関の状況、医療機関の稼働状況、安全性などについても情報収集に努めて欲しい。全壊家屋数や被災避難住民の数を知っておく事も重要である。災害発生時に多くの人が避難していた避難所でも、全壊家屋が少ない地域では、ライフラインの普及と共に家に戻れる人が多く、避難所人口が変化する。反対に、全壊家屋が多い地域では避難所の避難者は減少しない。電気・水道・ガス・電話・携帯電話・インターネット回線などのライフラインの破壊と復旧状況や見通しを知っておくことで、活動の計画ができ被災地への持ち物も調整できる。

被災地での心構え

何のために被災地へ行くのか?自覚してから被災地へ!

派遣ナースとして被災地で活動する場合に心がけて欲しいことは、「自分は何のために被災地へ行くのか?」という目的を見失わないで欲しいということである。活動の主目的は、被災地域の人々の健康の維持と被災地で働く看護職の支援である。その目的を遂行するためには自身の健康に気遣い、円滑なコミュニケーション、看護活動ができるような服装や持参品、適切な情報収集、が必要であることが理解できるだろう。

自己完結のボランティア活動とは?

「被災地支援にいくなら自己完結の姿勢で」と言う言葉を聞かれたことがあるだろう。ここでいう「自己完結」とは、被災地医療職や被災住民の皆様に迷惑をかけずに自分自身で意志決定をし周囲の人々と連携した活動ができるということである。災害支援に赴いているという状況で「気分が高揚」し現地に出かける人が多いが、到着した被災地ではすでに多くの人々は疲労が蓄積しているなかで活動している。空気が読めず温度差の違いを感じさせ被災地の人々を疲れさせる可能性もある。不用意に「これまだできていないんですか?」と何気なく聞いた言葉も現地の人々は非難されたととらえるかも知れない。なぜなら、現地の支援者達は「十分なことができていない」と日々自問しながら活動していることが多いからである。使う言葉も配慮して活動して欲しい。

従って、被災地では「自分のしたい援助が相手の望む援助であるとは限らない」ことを認識し活動して欲しい。相手の気持ちを察し、必要とされているニーズを見つけ出し、看護の基本に立ち戻ってコミュニケーションして頂きたい。

しかし、消極的になるのではなく積極的で自発的な活動を行って頂きたい。不足する災害看護に関する知識・技術を学び活動することは必要だが、実は最も重要なことは人として当たり前の常識を持って看護できる人間力・社会力を持つことであると経験から実感している

避難所での看護の役割

・避難住民の数や健康状態・避難所環境の把握

看護職として避難所に駐留する際には、避難住民の数や健康状態・避難所環境などの状況について情報を入手し把握することが求められる。その内容を日報に記載し、毎日FAX送信やミーティングに参加することにより報告する必要があるからだ。

避難所の人口は昼と夜では大きく違う。昼間は、被災者の皆さんは被災した自宅の片付けに出るか、時間が経過すると働きに出るため避難所内は子どもと高齢者だけとなる。東日本大震災のケースでは昼間は行方不明のご家族を捜しに出かける人も多かった。避難所で最も人が多くなるのは、朝食と夕食の配食時となる。伝達したい情報や実施したい内容があれば人口の最も多いこのときに行うのがよい。エコノミークラス症候群や廃用症候群予防のためのラジオ体操なども人が多い朝夕にやる方が効果的である。

更新される災害関連情報にも敏感になっておく必要がある。情報入手しにくい高齢者などに伝える必要があるためである。

ラジオ・新聞・インターネットの情報を積極的に得る

災害時、最も有用な媒体はラジオである。ラジオでは基地局が破壊されない限り放送を聴取することができる。何か活動をしながらでも音は耳に入る。避難所には新聞が置いてあることも多いため読むと良い。携帯電話やインターネットは電力が普及すれば便利な媒体となる。

様々な職種の人々と交流を持ち有用な情報を得る

避難所で看護しているなかでは、自宅避難者の数の把握は困難であるが、避難所を運営している組織やリーダー、自治会長に聞くと情報を持っている場合があるため情報を得て看護支援の必要性を探る。支援が必要な場合は、行政保健師との連携を試みる。その他、避難所には必ず行政担当者が2名駐在し、医療職にも出会う。ボランティアを組織する社会福祉法人や自衛隊が駐留している場合もあるため様々な職種の人々と交流を持ち有用な情報を得て連携し被災地での支援を行う。

被災者の関心事でもあるライフライン状況と見通しを知る

生活しているので不便は実感できるが、見通しに関してはデマや噂が飛び交うのが常であるため、詳細は行政から情報を得る。

マンパワー稼働状況や避難所環境を把握し適切な支援へ結びつける

不足物品があったり環境改善が必要な場合は、なるべく多くのことをメモに記載しておき毎日参加する行政看護職とのミーティングで主張する。

避難所の状況と被災者の健康状態、多い訴え

 避難所で看護する場合、まずは最初に空間の端に立って避難所の空間全体を見渡してみよう。広い空間のなかのひとりずつの表情や動作がよく見えるだろう。苦しそうな人はいないか、咳をしている人はいないか注意深く観察してみよう。そして他のNsと手分けして血圧測定をしながら会話をして避難所空間全体を回りましょう。「血圧測りましょうか?」と看護職の武器である血圧計と聴診器を持ち話しかけると、被災者さん達は注意を向けてくれるし、被災者さん達の身体に触れることもでき相手に安心感を与えることもできる。そのうちに一言二言と話し始める方もおられるため耳を傾けよう。最初は身体についての話でなかったとしても耳を傾け、だんだん身体についての話にも触れてみよう。それまで自身の体のことに気を配る余裕がなかった被災者もいるはずで、現在の体調に自身が気づけるよう支援し語っていただこう。

避難所で暮らす人々の血圧を測定しているとあまりに皆さんの血圧が高いことに気づくだろう。避難所では、血圧が安定する要素があまりに少ないからだ。地震・余震に対する不安と恐怖心、将来への不安、プライバシーが保てない、安心できず眠れない、喪失感や焦燥感のある人もいるだろう。日中に家の片付けをしていて疲れすぎていて眠れない場合もある。血圧が高いのは被災者だけでない支援している側も同じだ。行政担当者や炊き出しをしている人、自治会長さんの血圧や体調にも注意を払おう。

避難所生活のなかで持病の悪化する人も多い。高血圧・糖尿病・リウマチなど病歴を聴取しよう。喘息や呼吸器疾患のある人には聴診器で呼吸音の聴取をしてみよう。避難所の中で風邪やインフルエンザ患者が出ると同じ空間にいるため瞬く間に流行する。流行する前に、避難所での健康教育指導が重要である。手洗い・うがい・くしゃみ咳エチケットについて教育し、人からうつされる事を予防するだけでなく自分が感染源となる可能性があることに注意を払えるようにポスターやチラシを作り、住民を啓蒙しよう。その他に食中毒についても、日数が経過するとおにぎりやお弁当の取り置きで発生し集団感染を引き起こす可能性がある。いったん支援物資が届くようになっていたら消費期限を越えた食品は廃棄するよう促そう。

主に高齢者に多いのだが、日数が経過すると避難所のトイレが汚くなりはじめ、トイレが遠いとさらにトイレに行くことを我慢するようになる。水を飲まないことが賢明だと思うようになる。そうなると脱水症やエコノミークラス症候群、廃用症候群の誘因となる。努めて水分摂取を勧めよう。ペットボトルにマジックペンで日付を記し線を引き翌日までに線まで飲むよう促すと良い。

 

住民のニーズと優先すべき健康問題の把握
 優先すべき健康問題の把握は、緊急性があるか、避難所でこの先暮らせるかどうかの2点で判断しよう。例えば、人工透析者、在宅酸素療法をしている者、認知症、感染症などの場合である。実際に私が体験した例だが、人工透析者だったが家族がそばにいて近所に透析医院があり透析予定日にそこまで通えうことができるからと避難所で暮らしていた人もいる。災害後、もっとも早期に病院に移送する必要があると思っていた人工透析者だが、支援と病院があれば避難所での暮らしを望む人もいる。

別のケースでは、夕食後に頭痛がするため災害支援ナースである私のところに来られ、血圧を測定すると収縮期血圧が200mmHgあり、片側のしびれを自覚しており、すぐに救護班のいる災害対策本部に行っていただいたこともある。緊急性の判断がナースだけでは難しい場合については、医師とすぐ連絡を取る事が必要である。

健康相談を実施した際に、簡単な集計と分析を行う

私たちは被災地外の災害支援者である。いずれは被災地を出ることになるため継続看護を可能にするために記録物に記述することは重要で、どのような症状や病気が避難所内に多いのか、いつも簡単に集計する必要がある。記録物のフォーマットが決められている場合は良いが無ければ自身で作成する事が必要である。

例)

症状のある人の人数:

発熱・咳・頭痛・高血圧・めまい・腹痛・便秘・下痢・食欲不振・ストレス・不安・吐き気嘔吐・睡眠不足・疲れ

これらは以下に掲載されています。

・被災者のアセスメントシート

・避難所の環境整備シート

どちらのシートも災害看護「命を守る知識と技術の情報館」http://www.coe-cnas.jp/ から引用

 


  • 兵庫県立大学 大学院 看護学研究科