2006年5月3日
個人情報保護法について

 きょうは昨年4月に全面改訂された個人情報保護法についてお話しましょう。

じつはいま看護の臨床現場の「個人情報保護」に対する反応はいささか過剰であると同時に、個人情報保護法に対する理解を深め、正しい判断をする必要性を感じています。

「正しい判断」をする必要性について、最近の有名な事例を例に考えてみましょう。

JR福知山線の列車脱線事故では、病院に搬送された方々の個人情報保護への対応を巡って混乱が生じたことは皆さんの記憶にも新しいと思います。搬送された病院によって個人情報の問い合わせに対する対応に違いがあり、一刻も早い患者さんの身元確認が必要な状況でも個人情報保護の方に重きが置かれたケースがありました。

この病院の対応については、必要な安否情報は第三者に知らせる必要があったと多くの新聞やニュースで報道されました。必要な安否情報は個人情報の「第三者提供の例外」にあたるのです。個人情報保護法では第23条で「個人情報の第三者提供の制限」が掲げられており、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはいけないのですが、第三者提供が、「人の生命・身体・財産の保護に必要で、かつ本人の同意を取ることが困難な場合」には例外的取り扱いが必要になります。この事例はまさにこの「例外」だったと考えられます。わたしは、この事例に類似したケースは実は今日の医療現場においては様々な局面で起こりえることだと思うのです。

先日、看護師さんたちに個人情報の保護に関する講義をさせて頂く機会を得ました。そのなかで皆さんの臨床現場での混乱や対応の困難さを聞きました。

 病院の受付で患者さんの名前を呼んでよいのか?

 病室の前やベッドに名札を付けて良いのか?

 配膳する食事内容と名前を書いた紙をどうしたらよいのか?

 浴室の前に浴室に入る順番を記入した表を貼って良いのか?

 などですが皆さんはどう考えますか?

いまから上記の①~④に関する私なりの意見を述べますが、皆さんもどうした らよいのかご自身で考えてみてください。

 

 ②に関しては、患者さんを間違えると、大変なことになりますよね。その危

険性を回避しながら出来るだけ患者さんの個人情報を保護する方向を考えると自

ずと答えがでるのではないでしょうか?

 も同様ですね。患者さんが治療食を食べているような場合に、他の人の食事

間違うと大変ですよね。

④に関しては、これではお風呂に入っている間は絶対に患者さんは部屋には居な

いのですから「この時間帯に盗みに入ってくれ!」とわざわざ泥棒に知らせてい

るようなものですよね(苦笑)。この表はNsステーションに貼るとか他の連絡

方法を使うなど知恵を出し合って最良の方法を考えたほうが良さそうですね。

このように個人情報保護に関してどう対応するかの話は病院のトップレベルで話し合う必要のある事柄から、Nsステーションのミーティングで、もしくは患者さんとNsとの間で話し合うレベルの話までいろいろあるのです。

これらについて考えるときの原則は一つだと思うのです。

「患者さんの安全を守る!」ということです。

そして、個人情報保護法は、私たちの仕事や活動の内容に制限を加えるものではないのです。そこを勘違いしてはいけません。

NSは患者さんの安全安心を保ちながら円滑に仕事ができるように配慮しなければいけません。

それから、個人情報保護法にどう自分の職場や学校で対応するかについてわたしは決められた答えはないと思っています。よく話し合い患者さんが一番安全に過ごせる方法を考えるべきなのです。

個人情報保護には、第三者利用の制限だけでなく利用目的の特定・通知・公表・明示や目的外利用の禁止や適正取得などあるので、一度皆さんもインターネットで調べたり本を買ったりして勉強してみて下さい。

ところで、「第三者とはだれか?」に関してですが、本人以外のことであり、つまり家族も第三者なのです。欧米などは個人の自立を強調するのでこの考えはすぐ馴染むと思いますが、日本は家族を1単位と考える人が多いためそう言われてもピンと来ないかも知れませんね。


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