2010年11月29日
「ふきん絞り器」：学会発表した結果を掲載しています
第25回日本臨床リウマチ学会（学会長 佐川昭リウマチクリニック 佐川昭先生）に参加し、開発した「ふきん絞り器」に関して発表してきました。
加古川のリウマチ専門病院でRA患者さん30人の皆さんにユーザー試験を実施した結果について発表してきました。
以下、かいつまんで発表の内容を掲載します。
テーマ：手指機能や握力に依存せず簡単に絞れる「ふきん絞り器」の開発とRA患者への適応
「ふきん絞り器」製品開発の背景：
•RA患者は、手指の変形や握力低下など手指機能障害が起こると、タオルやふきんが十分に絞れず家事や生活に支障をきたす
•タオルやふきんを効果的に絞れる自助具は、まだ十分に開発が進んでおらず、製品利用に関する要望も多い
（これまでいくつか開発されているが、いま有効なものはない）
•「どのように困っているか」に関する利用のニーズについて Web上で先行調査を実施した
•調査結果を、産学連携の研修会で報告し、作ってくれる協力企業を募った
•開発するのだから関節リウマチだけでなく高齢者や片麻痺のある人も使えるよう対象を拡げたい
•開発の目的：台所で邪魔にならず、駆動電源が不必要な ふきん絞り器を開発したい
製品代金や電気代が低コスト
設置場所の自由度も高くなる
•調査目的：「ふきん絞り器」の性能を評価し、製品開発の完成に役立てる
結果：
手絞りと製品では製品のほうがよく絞れていた
手絞り 平均47.57g 製品52.97g （ｔ検定 p<0.032）
•手絞りしたとき
「絞り困難のない者」と「絞り困難ある者」に有意差あり
＝ つまり、絞り困難がないほどふきんはよく絞れる・・・これは当たり前なこと
（Mann-Whitney のU検定, Z値-2.606, p＝0.009 ）
•ふきん絞り器を使用したとき
「絞り困難ない者」と「絞り困難ある者」に有意差なし
＝ つまり、どちらもよく絞れており、絞り器は有用
（Mann-Whitney のU検定, Z値-0.870, p＝0.384）
l絞り困難のある者については、「絞り器使用」のほうが、手絞りするより良く絞れていた
＝つまり、「絞り器使用」は日常生活動作を助けることになる
（Wilcoxonの符号付き順位検定, Z値-2.615, p=0.009）
l絞り困難のない者は「手絞り」と「絞り器使用」とでは有意差はなかった
＝ つまり、絞り器を使用しても絞れる量は同じ
（Wilcoxonの符号付き順位検定, Z値-1.706, p=0.088）
ただし、この場合でも、「絞り器使用」は手首や指先の保護（変形防止）には役立つと思われる
そのほか、今回の調査で分かったこと：
•握力10ｋｇ以下のRA患者18人のうち13人が「絞り器使用」の方がよく絞れており、そうでない5人は絞り器と手絞りとも同じ値であった
•握力6ｋｇ以下のものは、開発した「絞り器」の回転羽根がスムーズに回せない（調査は7月に実施）
→ これに関して、その後8-11月で改良を施し、ほぼ回転羽根の反発力とタオルの端っこの固定処理の2つ
の課題を克服し
11月24日についに完成品となる！
結論：
•RA患者では絞り困難を感じている者ほど握力は低く、手絞りの量が少なかった
•絞り困難のあるものでは「手絞り」より「絞り器使用」の方がよく絞れていた → 絞り器は効果がある
•絞り困難のないものは、絞り器を使用しても良く絞れるようになるわけではないが、絞る動作に使う手首や指先の保護ができ、将来の変形防止としては役立つと思われる
•開発したふきん絞り器は、握力10ｋｇ以下のRA患者に特に有用な自助具となり得ることがわかった
•握力6ｋｇ以下のRA患者では、より容易に使える製品へと改良する必要がある
最後に：
•研究にご協力いただきました患者様、病院のスタッフの皆様に深謝いたします
•患者の皆さんが使いやすい「ふきん絞り器」としてすこしでも早くに世の中に流通させたいと思います
•皆様も、院内で一個はご購入いただけたらありがたく思います！
その場合は、私のブログコメントに「購入希望」とコメントください
神崎さんの部屋
リウマチと家族と看護の広場 https://kanzaki-nursing.jp/rheumatism/
yahooやgoogleなどで「リウマチ 看護」で検索可能
学会会場では、思いのほかこのサイトをご覧になっている方が多くて感激しました！
今後も頑張ります！
